その前日、”小牧中学校区健全育成会”の集まりで、シンポジウムの前に「桃太郎」を一席伺い、この地に一泊した雀松師は、4月に亡くなった桂雀松師の3人目の弟子。多士済々、バラエティーに富んだ弟子連の中でも、芸風のスマートさで群を抜いた存在である。
この日に演じた小佐田定雄作「マキシム・ド・ゼンザイ」は、上方の四代目桂文三作の「改良善哉−ぜんざい公社」を、グルメブームへの皮肉に改良した小佐田定雄作のリニューアル版だが、作品と演者の幸福な出会いの好例。インギンブレイなギャルソン(!?)のキザな身ぶりと口調のおかしさは雀松ならでは。
もう一席の「替り目」は、雀松で聴くのは初めてなので確かめたら、3年ほど前からだという。芸風のモダンさはこの人の資質で、古典にことさら現代的な(アナクロニズムの)クスグリを入れなくても新鮮に聞こえるのが強み。ちょっとした表現の工夫で、米朝・枝雀のそれとはまた違った味わいになるのである。
(楽屋雀)
第39回『桂雀松』1999年7月4日