桂米朝の9番目の弟子でしばらく高座を離れていたが、ファンをはじめ、桂ざこばなどの先輩同輩から、その才を惜しむ声が多く、ラブコールにこたえる形で復帰した。
正統派の芸で観客をつかむのは、演者としての理想だろうが、千朝はまさにそのタイプで、当初”米朝のコピー”と言われたほど。
復帰後、一層、メリハリをきかせて演ずるようになったのは、線が細く、印象が暗くなりがちなのを克服するためだろう。
当日はたっぷり3席。「住吉駕(かご)」は、自分に駕をすすめた間抜けな新米の駕屋をしかる茶店のおやじが、ののしりつつもどこか可笑しそうなのがいい。
「鴻池の犬」は、人情味のあるいい噺だが、犬同士の会話のくだりに「101匹わんちゃん」などの今風のギャグを加えたのが、うまく生きた。「佐々木裁き」も好調で、大受け。
雨の日曜日、しかも同時刻に、ほど遠からぬホールで小朝の独演会があるというのに、こちらもまずまずの入りだった。(楽互家)
第35回『桂千朝』1998年6月21日