正朝のだしものは、「宗論」と「火焔太鼓」。前者は、キリスト教信者の息子と仏教徒の父親の珍妙な論戦。中東問題の時期にふさわしい(!?)ネタだ。
「火焔太鼓」は、志ん生から教わった柳朝が、さらに加えたギャグがはっきりわかる。バラツキの多かった志ん生だが、いかにムダのない語り口だったかを再認識した。
正朝、自分を前に見たことのある客が二人しかいないと知ったせいか、やや調子を落とした。侍が「なっちゃった」などと口走るのは、まずい。当夜の観客に一言。正朝は、いつもはもっといいよ。でなきゃ、はるばる聴きには行かない。
ともあれこの会、ムードは悪くないし、関西の雀三郎、雀松らも来ているのは、いい選択だ。(楽語者)
第8回『春風亭正朝』1991年3月16日